平成14年度


『最適打順決定法』

石原 靖広


『スポーツスケジューリング問題
      プロ野球セントラル・リーグにおけるスケジューリング』

大村 剛士


『巡回セールスマン問題とその実用化 九州を例にとって』

加藤 真美
田中 友梨
松山 由紀


『交通流割り当て問題 豊田市方面への道路の効率的な利用法について』

川口 智


『名古屋市栄地下街における車椅子対応トイレの最適配置』

永山 浩二


『空き缶の協力収集システムのモデル構築と費用分配のゲーム論的解析』

間下 拓哉













 

 


『最適打順法について』

石原 靖広


  野球においてチームが試合に勝つにはどうしたらよいかを考えたときに様々な要因がある。能力の高い選手を集めるてくるという方法もあるが、選手の能力をいかに最大限発揮させることができるのかに注目してみる。打順を組み替えるのも1つの手段である。得点をより多く取ったほうが勝つことのできる野球では、打順の組み合わせは、頭を悩ませる問題の一つである。そこで本論文では、具体的に阪神タイガースを例にとって打順を考えてみた。 


  n人の選手をk人選んでその打順を一つの指標を用いて決定する問題を定式化し、これをExcelで解いてみた。指標については、打順をまず考えてみたがその他にも考えられる。そこで、長打率をさらに追加した問題を同様に定式化し解いた。そして他のセ・リーグの球団についても解いて、阪神タイガースとの比較をしてみた。



『スポーツスケジューリング問題
    プロ野球セントラル・リーグにおけるスケジューリング』

大村 剛士

 


  スケジューリングには、トーナメントや総当たり戦など、競技によって考慮される条件が異なっている。本論文では、2001年度日本プロ野球(セントラル・リーグ)を振り返り、ホーム、アウェイ試合数、移動コスト、観客動員数の点から、それぞれのチームにとって公平なスケジュールかどうかを分析し、再スケジューリングを行った。

  本論文では、まず4チームのスケジューリングを行い、その手順を紹介した。次に本論文のテーマであるセントラル・リーグの再スケジューリングを行うべく、チーム数を6チームに増やした。ホームとアウェイを決めるテーブル(HAT)を求めることから、スケジュールの生成までをExcelのソルバーで解いた。その際、ホーム・アウェイ試合数などが公平になるような制約を与え、チームを割り当てる際に、「総移動コストの最小化」、「観客動員数の最大化」という2点からそれぞれスケジュールを生成し、得られたスケジュールと過去のスケジュールと比較した。

  得られたスケジュールの中から最適なスケジュールを採用し、さらに移動コストを抑えられる可能性があると考えられたため、再度チーム名の割り当てを行った。その際、最初の割り当てと異なるのは、「前半戦と後半戦の区別をなくして割り当てる」という点であった。

  その結果得られたスケジュールは、過去のスケジュールに比べ、総移動コストを大幅に抑え、観客動員数も増加させることができた。


『巡回セールスマン問題とその実用化 九州を例にとって』

加藤 真美
田中 友梨
松山 由紀


 現代の人間の移動手段の中で私たちにとって一番身近で、ほぼ毎日乗るものは自動車である。そこで私たちは自動車を利用して九州の名所を効率よく廻る方法を、巡回セールスマン問題としてとらえ、考えることにした。巡回セールスマン問題とは、与えられたn個の点をたどる最短の巡回路(tour)を求めるものである。

 この問題を解くにあたってはEXCELを使用し、厳密解を求めることを目的とした、一般に巡回セールスマン問題は、多項式時間アルゴリズムでは解けない難しい問題であるので、節点数の大きい問題は解くのが非常に困難である。今回制約条件を解きやすくすることによって節点数16個まで解くことができた。また書機会として、0-1制約を緩和した線形計画問題を利用している。EXCELのソルバーを使って分かったことだが、凸計画問題の場合は容易に解を求めることができるが、制約が凸集合でなくなると解きづらくなるため、制約条件も凸関数にしなければならないのでEXCELにはそういった不便な面も見られた。また、小さい問題の場合には、EXCELで厳密に解くよりも見た目で最短経路がある程度は分かる事があるので、その点を考慮して解いてみるのもよい。

『交通流割り当て問題 豊田市方面への道路の効率的な利用法について』

川口 智





『名古屋市栄地下街における車椅子対応トイレの最適配置』

永山 浩二


  本論文では、最適施設配置問題 −ある地域内に必要な施設をどのように配置したら利用者にとって最も効率よく利用できるか− という問題について考える。具体的には、名古屋市栄地下街を対象とし、車いす用トイレの配置の最適化を行い、利用者にとってより利便性に優れたトイレの配置を探っていく。


  普段、我々がトイレを利用する際には、最寄りのトイレを利用する機会が最も多いと判断し、全ての利用者は移動時間が最短となるトイレまで移動すると仮定した。本論文では利用者全てについて移動時間を求め、その総和を最小化することによって利便性の根拠とした。トイレの配置を最適化することで最寄りのトイレまでの時間の総和を減らすことができればよい。


  その手順は、栄地下街のどこにでもトイレを作れるものとして最適な場所を見つけ、その付近の既存の非車いす対応トイレを車いす対応のトイレに改良していくということにした。その結果、新たに1つ増設する場合は約26%、2つ増設する場合は約41%、その総時間を減らすことができた。



『空き缶の協力収集システムのモデル構築と費用分配のゲーム論的解析』

間下 拓哉


  今、環境保護が盛んに叫ばれている。これまでのような大量消費・大量廃棄の社会は、変革をせまられており、各自治体で盛んにリサイクルが行われている。とりわけ空き缶は、溶かしてふたたびいろいろな物に加工できるため、全国的に収集・再利用が行われている。ところが現在その収集の担い手は、生産者でも販売者でも消費者でもなく、行政であり、その元となっている資金は税金である。しかし、本来は関係する生産者、販売者、消費者が協力して資金を提供して収集を行うべきではないかと思われる。そこで、生産者、販売者、消費者および行政が協力、提携して収集を行った場合、どのように費用を負担するのが妥当かを考えたい。


  本論文ではこの問題を、生産者、販売者、消費者および行政をプレイヤーとした提携ゲームとして定式化する。提携ゲームにもとづいた費用負担の解決はダム建設による水資源開発等、さまざまな開発事業の費用負担を考える際に用いられている。リサイクルで生じる費用を各プレイヤーがいかに負担すれば妥当であるかについてゲーム理論的に分析することが本論文のねらいである。


  まずゴミ収集やリサイクルに関するデータを集めて、そのデータをもとに資源収集にかかるコスト、特性関数を求め、4人のプレイヤーによる提携ゲームモデルを定式化した。そしてその値をもとにして、ゲームの解であるシャープレイ値やコア、仁を推察し、その意味を考察した結果、このモデルにおける費用負担案を求めることができた。このモデルから出た結論はひとつの提案に過ぎないが、いつまでも現在のような行政任せのリサイクルをするのではなく、さまざまな関係者の協力・提携についてもっと真剣に検討されるべきだと思われる。