平成16年度


『高速道路の時間帯別料金変化による交通量分析と渋滞緩和政策』

小崎 裕幸


『サポートベクターマシンによる競馬必勝法』

杉山 学


『モンテカルロ法を用いたプロ野球ペナントレース予想〜優勝チームと決定日を予測する〜』

川本 あゆみ


『自動車学校の送迎バスの統合によるコストの削減』

柴田 秀子


『プロ野球選手の打撃成績と年俸の関係』

西元 英治


『天候デリバティブに対する評価法』

神谷 祥代













 

 


『高速道路の時間帯別料金変化による交通量分析と渋滞緩和政策』

小崎 裕幸


  野。 



サポートベクターマシンによる競馬必勝法』

杉山 学


   近年、文章・データ分類、 パターン認識の分野でSupport Vector Machine (SVM)と 呼ばれる手法が注目を集めている。 SVMは1960年代にVapnikらによって提唱されたものであるが、 そこでは線形識別関数(超平面)の構築の際に線形計画法や 関数解析に基づいた工夫が加えられている。 SVMは高い学習能力及び学習の容易さを持つだけでなく、 数値的に局所解の問題が存在しないという優れた特徴を持つ。

 具体的にはあるn個の学習サンプル x,...,xn(xi∈Rd :dは項目数)を考える。 それぞれのサンプル xi がクラスAに属していればyi = 1、 クラスBに属していればyi=-1と表す。 SVMでは、サンプル yi の値に応じて2クラスに超平面で分離可能であるとは、 判別関数を f(x) = wtx + bとして
       yi・ f(xi) ≧1 (i = 1,..,n)
を満たすw∈Rd、b∈Rを見つける。 超平面に最も接近するサンプルをサポートベクターと呼ぶ。 汎化能力の高い判別関数を推定するには、 次のような凸2次計画問題に帰着できる。

    minimize ||w||2

   subject to yi(wtxi + b) ≧ 1  (i = 1,..,n)

  最近の計算機の性能の向上により、 上の2次計画問題が実用的な時間で解けるようになってきてから、 SVMアルゴリズムは非常に有力な判別方法であると考えられるようになってきた。 さらに医療など新しい分野への応用も見られ、 またギャンブルや金融商品の予想、 すなわちある株やくじを買うか買わないかを分類するという問題に SVMを応用することは興味深い話題である。

 本論文ではギャンブルのひとつである競馬(名古屋競馬)にSVMを適用して予想に役立つかどうかを検証した。 競馬は結果が全く事前にはわからない。 そして他の競艇や競輪に比べて、 馬が対象のため人の都合だけではどうにもならない不確定な要素が多くある。 しかし、予想に必要とされるデータは豊富に提供されているので、 SVMに競馬のデータを学習させることによって馬券的中対象馬を判別できるのか、 その判別の精度がどの程度のものなのか、 判別に必要となるデータはどのようなものなのかについて調べた。 具体的には、公開されているソフトウェアを利用して総合的にSVMの判別の性能を確かめた。 さらに、判別させた結果を用いて、 より高い回収率が得られるような馬券の購入の組み合わせ方についても検討した。

  その結果、競馬という不確かなものの予想に対しても、適切な項目を入力できれば、 SVMは高い判別能力を発揮することがわかった。 その適切な項目の選択には相関を調べることが有効であるとわかった。 また、SVMの判別結果を元に、 購入馬券を絞り込むことによって回収率は100%を超えることも可能ということがわかり、 実際の購入に十分役に立たせるデータの判別が行われていることがわかった。

  今回はレースの条件をひとつに絞って実験をしたが、この結果は、 クラスや距離といった条件が違っても通用するのか、 また、条件を変えた場合なにが最適な入力項目となるかも検証可能であろう。 これに関連して同じようなメンバーが出走する地方競馬ではなく、 メンバーの構成に幅のあり、 出走頭数も多い中央競馬を考えた場合はたしてSVMは高い判別能力を示すのか。 そのときの項目は地方競馬とは違うのか、 など調べてみたいことは数多く考えられる。


『モンテカルロ法を用いたプロ野球ペナントレース予想〜優勝チームと決定日を予測する〜』

川本 あゆみ


 近年,日本のプロ野球は, まったく注目されなくなったというわけではないが, サッカーや,格闘技などの注目が高くなったことや, スター選手が続々とメジャーリーグに渡ってしまったことにより, ファンが離れてしまっている.そのような時勢から, 地上波で全国放送される試合は一部の球団のみ, パシフィックリーグ戦が放送されるのは, 優勝決定の可能性の高い試合のみ,というのが現状である. 各放送局にとって問題となるのは, いつ注目のゲームが行われるのか出来るだけ早い時期に知りたい, ということである.

 このような状況の元で, 本論文ではシーズン途中のチーム間の力関係から 優勝チームおよびその決定日を予想することを考えた. 対象とするのは,普段は放映されないが, 優勝が決まる瞬間は放映したいパシフィックリーグである. 具体的には,1シーズンの中で4つの予想時点を考え, それまでの勝敗を利用して, 残りのペナントレースについて乱数を用いてモンテカルロ法により シミュレーションを行い,優勝日を予想した.

 実験法はまず,過去のシーズンについて 各チーム間5試合対戦ごとの結果 (1チームあたり25試合終了時点での勝敗表) を用いて疑似乱数生成アルゴリズムMersenne Twister を利用したプログラムにかけた. そこで得られる各チームの優勝確率と予想勝敗数から, 優勝日を予想した.

 実験結果から考察すると10試合消化時点で優勝チームは分かるが, 優勝決定日についてはそのシーズン全体の流れによって, 予想の正確さに開きが生まれた. 混戦のときは予想も現実もシーズン終盤に優勝日があるが, 1チーム独走の場合は, ある時点から先もそのチームが同じペースで勝ち続ける 可能性が低いため優勝日予想が外れてしまった. 今後の課題は,同じペースで勝負が進む今のプログラムを改良し, 予想の勝敗にさらにランダムさを加え,正確な予測を目指すことである.


『自動車学校の送迎バスの統合によるコストの削減』

柴田 秀子


 現代においてバスは、 公共交通機関として重要な役割を果たしている。 自動車、自転車を運転しない人などにとっては欠かせない乗り物であろう。 しかし、実際にはバスの乗車状況は各路線によってかなり異なっている。 座れないほど込んでいるバスもあれば、座席が余っているバスも見られる。

 本論文では、自動車学校の送迎バスに対して、 路線の統合という形で無駄を省き、 コストの削減に繋げることを考察する。 統合の形としてはいろいろなものが考えられるが、 本論文では学校内の統合だけでなく、異なる学校間の統合も考え、 統合政策がバス運行におけるコスト削減にある程度の効果があることを示した。




『プロ野球選手の打撃成績と年俸の関係』

西元 英治


 プロ野球選手の打撃成績を評価する方法は様々であるが、 本論文では、DEA法を使って選手の能力を調べることにする。 DEA法とは多くの項目を用いた相対的な評価法である。 求められた効率値に対して、2004年度年俸、2003年度年俸、 UP額、UP率との相関係数を求め、どのように相関しているのかを調べた。 移籍等で大幅に年俸がアップしたと考えられる選手は 考慮の対象から外して改めて係数を出して相関関係を調べると、 評価方法がある程度正しいことがわかった。今後の課題は、 出来高払やFAなどによる成績以外のファクターを いかに考えに入れるかなどがあげられる。



『天候デリバティブに対する評価法』

神谷 祥代


  本論文では、近年日本でも発売されてきた 平均気温型の暖冬デリバティブに対する評価について考察している。 評価法は、マルコフ連鎖型モデルを用いて気温変化を定式化している。 なぜなら、可能性のある気温変化すべてを考慮に入れると 1ヶ月でも非常に多くの場合分けが必要となるので、 マルコフ連鎖を用いて、 明日の気温は今日の気温のみに依存していると考える。 さらに、観測期間と平均気温の幅を分割することで、 大まかな気温変化と細かな気温変化を表現する。 こうして期待累積平均気温の累積分布を求め、 保険金の期待支払額を計算し暖冬デリバティブの正当性を評価する。 その結果、この評価法は、 期間と気温幅の分割数や境界値の違いによって、 期待累積平均気温がかなり左右されてしまうことがわかった。 期間の分割数を2,3,4とした場合、 3分割の場合が最も現実に近いふるまいをしていた。 今後の課題として、最適な分割法を事前に適確につかむこと、 また異なる分析法を用いて評価・比較することが必要であると考えられる。