平成181031

                 名古屋市立大学

 日本政策投資銀行

 

名古屋市立大学と日本政策投資銀行が、

「東海地域における対日直接投資」 −「企業活動基本調査」の個票分析−

の共同調査結果を公表

 

1.       公立大学法人名古屋市立大学(理事長:西野仁雄)と日本政策投資銀行東海支店(支店長:

小笠原 朗)は、平成17年度より、産学連携事業の一つとして共同調査に取り組んで参りましたが、このたび「東海地域における対日直接投資 −「企業活動基本調査」の個票分析−」について調査結果を取り纏めました。

本調査は、東海地域(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の東海4県)における外資系企業の特徴を、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県)、関西圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県の2府4県)との比較で、経済産業省「企業活動基本調査」の個票データに基づいて初めて明らかにしたものであり、東海地域への外資系企業誘致促進のためのインプリケーションの提示を目的としています。要旨は以下の通りです。

 

2.「企業活動基本調査」では、従業員50人以上かつ資本金あるいは出資金3,000万円以上の比較的規模の大きな企業が調査対象とされていることから、外資系企業数は経済産業省「外資系企業動向調査」や東洋経済新報社「外資系企業総覧」と比較して少ないが、事業組織別の従業者数分布、財政・損益状況、取引状況、研究開発など、他の調査にはない項目が含まれている。  

外資系企業の定義については、外資比率33.3%未満の企業には、日本企業として認識される優良企業の存在が確認されたため、外資比率33.3%以上で捉えるのが適当であると判断した。 

東海地域における外資系企業は、首都圏、関西圏と比較すると、

@外資系企業数の占める比率が小さく、外資比率100%企業の割合も低い。

A従業員数は総じて少なく、派遣労働者に依存する割合が高い。

B本社に製造事業部門を有している企業の割合は高いが、研究開発部門や研究所を持つ企業の割合は低い。

といった特徴があることがわかった。

 

3.現在、東海地域の雇用環境は全国的にみて極めて良好であるが、労働需給が逼迫する状況下では、研究開発の視点からみた外資系企業誘致促進に意義があると思われる。

外資系企業(外資比率33.3%以上)の雇用状況を純粋日本企業(外資比率0%)と対比したところ、東海地域、首都圏、関西圏のいずれの地域も、

@外資系企業の方が日本企業に比べて、研究開発を実施している割合は高く、また研究開発の有無別でみた1社当たり常時従業者数の格差は大きい。なかでも東海地域での格差は顕著である。

A外資系製造業は本社・本店の中で本社機能部門の従業者数が現業部門のそれを上回っており、特に研究開発部門の寄与が目立つ。研究開発部門と研究所に従事する研究開発従業者の比率は日本の製造業の水準を凌駕しており、特に東海地域は関西地域と遜色のない高さとなっている。

B外資系製造業のウエートが高い東海地域と関西圏では、売上高研究開発費比率が高くなると、外資系企業の研究開発従業者比率の上昇幅が日本企業のそれよりも大きくなっており、研究開発に熱心な外資系製造業ほど研究開発従業者の増加による雇用創出効果が期待される。しかしながら、売上高研究開発費比率の高い外資系製造業で従業者数の多い上位業種は、東海地域の場合は輸送用機械1業種にとどまっており、日本企業で研究開発従業者数の多い業種で外資系企業も研究開発従業者数が多い傾向にある首都圏(化学、輸送用機械、電気機械)や関西圏(化学と電気機械)に比べて、業種の厚みに乏しい。東海地域で研究開発志向の外資系企業を誘致する場合は、日本企業では輸送用機械に次いで研究開発従業者の多い電気機械や一般機械がターゲットになりうる可能性がある。

 

4.外資系企業(外資比率10%以上/33.3%以上/10%以上かつ設立が1945年以降の3ケース)と国内企業(外資比率10%未満)の業績に違いがあるかどうかを検証した。

企業業績を中心とした属性の平均値について3つの地域で比較したところ、いずれの地域でも概ね外資系企業は国内企業に比べて規模が大きく、利益率と安定性は高いという結果となった。また、付加価値率については首都圏では国内企業の方が高いが、関西圏と東海地域においては違いがないという結果となった。

また、代表的な業績指標である総資産当期純利益率、総資産付加価値率、自己資本比率について、企業規模、地域、年度をコントロールして回帰分析を行ったところ、外資系企業のパフォーマンスの良さが確認された。

その背景には、

@外資系企業は従業員が相対的に少なく、人件費等の経費低減が進んでいること

A海外市場との取引が活発で(海外売上高比率あるいは海外仕入比率が高い)、国際的な事業展開を図ることにより幅広い収益機会とコスト低減の可能性があること 

等が考えられる。

今後は他地域と同等の業績をあげている東海地域の外資系企業に関連した経済効果を地域経済にどのようにビルド・インしていくかが重要な課題となる。

 

5.90年代以降に日本に進出した外資系企業(外資比率33.3%以上)の立地選択の要因分析を行った。

首都圏立地かそれ以外かという二者択一の意思決定モデルを推定したところ、

@首都圏は他地域と比べた相対的な経済規模の優位から多くの外資系企業を集めていること

A医薬品関連産業は首都圏以外に立地する傾向があること

B対日投資誘致策の多寡が首都圏以外への立地に影響を与えており、関西圏の対日投資誘致

策の効果を裏付けていること

が明らかとなった。

これらの結果を踏まえると、東海地域の対日投資促進にあたっては、誘致策立案・実施において東海地域の産業集積の特性と、質・量両面での誘致策を考慮することの重要性が示唆される。

 

            <本件に関するお問い合わせ>

名古屋市立大学大学院 経済学研究科 吉田和生(第3章:TEL 052-872-5717

名古屋市立大学大学院 経済学研究科 木村史彦(第3章:TEL 052-872-5720

名古屋市立大学大学院 経済学研究科 松原 聖(第4章:TEL 052-872-5726

日本政策投資銀行 調査部       神藤浩明(第1章、第2章:TEL 03-3244-1825

 
調査結果全文(pdf)

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