濱野正樹氏(早稲田大学)の「Adapting to within-country export barriers: Evidence from the Japan 2011 Tsunami」の報告は、新新貿易理論(Melitzモデル)の理論的拡張とそれに伴う実証分析である。企業の異質性を貿易の源泉とする理論的拡張は近年多くみられるが、濱野氏の研究では輸出に使われる施設(港)が複数あると仮定し、港間の比較優位や代替関係を明示的に表すなど、過去の研究にはない新しさがある。港はそれぞれ固有の固定費(クレーンの数など)と国内の輸送費によって港の比較優位が決められている。その上で、Chaney(2008)の重力モデルの手法を応用して日本のデータを使い、東日本大震災の影響で東北の港が被害を受けた際に、どこの港が代替したのかといった点についての実証分析を行っている。
フロアからは、東北の港などから関東の港を経由して輸出される場合はどう処理するのかなどの質問があがった。
私の感想としては、国内の輸送費や港固有の固定費によって理論を拡張するという着眼点を非常に面白く斬新だと感じた。国内のインフラ投資にも含意のある発展性のある研究だと感じた。
(文責:名古屋市立大学経済学研究科・博士後期課程2年・岩本朋大)
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