火曜研究会(6月27日)を開催しました。

一本目の、平口良司氏(明治大学)の「Wealth inequality, or r-g, in the economic growth model」の報告は、トマ・ピケティによる金利(r)と一人当たりGDP成長率(g)との差と格差に関する既存研究を拡張させたモデルに関してであった。技術水準が外生的に成長する(内生的成長であっても均衡は変わらない)という仮定を導入したモデルについて、以下の三点を中心としての説明がなされた。一点目は、r-gが格差拡大に影響を与えることについて、二点目は、モデルから導かれた関係式を使った政策的手法の検討である。そして三点目は、人的資本蓄積と不平等の度合いについての関係についてである。
フロアからは、モデル中の各式の意味や解釈について、また、一般的なモデルにおける均衡とは別の均衡が生じることについての質問がなされた。

二本目の、岡野衛士氏(名古屋市立大学)の「Revisiting the Fiscal Theory of Sovereign Risk from a DSGE Viewpoint」の報告は、Uribe(2006:Journal of Monetary Economics)によるSI-SD(インフレ抑制とデフォルト抑制)のトレードオフについての既存研究を拡張させたモデルに関してであった。生産を内生化することで、SI-SDのトレードオフの関係のうち、インフレ抑制によるデフォルトの増加はある程度抑制されるものとなった。その後、ギリシャのデータを使った計量的分析結果についても理論と整合的になったというものであった。
フロアからは、数あるUribe氏の研究の中から、なぜ2006年の論文に注目する必要があるのか、といった質問がなされた。

レポーターによる感想:2名による報告は、どちらも既存研究の仮定を緩めたモデルについての分析であった。仮定を緩め、現実により近づいたモデルは複雑な構造を持っているにも拘わらず、それぞれの方程式の関係は比較的すっきりしているものとなっていると感じた。
(文責:名古屋市立大学経済学研究科・博士後期課程1年・矢田部亨)

経済学研究科では、原則として毎月第4火曜日に、定例の研究会(「火曜研究会」)を開催しております。
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経済学研究科火曜研究会


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