英邦広氏(関西大学)による報告『マイナス金利政策導入による金融市場への影響』では、2016年1月に導入された、マイナス金利操作付き量的・質的金融緩和政策(マイナス金利政策)について、金融市場に与えるシグナル効果の分析が行われている。シグナル効果とは、情報を公にすることで与えられる影響のことを指す。本報告では、マイナス金利政策実施の政策声明による影響について、計量分析が行われている。
外国為替市場に与える影響については、分析対象とした31種類の為替レートのうち、19種が上昇していた。また、円に対する外国通貨は全体で分析を行ったところ、2.63から2.74%上昇させるような働き、つまり、円安をもたらすような効果が示された。国債市場においては、15タイプの国債について分析を行い、全てにおいて下落の効果がみられた。全体で分析を行ったところ11.83%の金利の下落が示された。株式市場では、15の業種の株式についての分析が行われ、銀行の株価は全て下落し、それ以外の10業種では、上昇する割合が高いことが示された。
報告に対してフロアからは、過去に日本が行ってきた金融政策との関わりや意義についての質問があった。また、それぞれの金融市場を分析する際のデータの捉え方やマイナス金利政策声明の効果だけをできるだけ抽出するための方法について議論が交わされた。
レポーターによる感想:為替、国債金利や株価の動向について統計的に支持されるような値になっていたので、政策当局の施策の重要さがとても実感される報告であった。金融政策実施の声明の有無における変化の違いについてもまたさらなる関心の対象とされてこよう。
(文責:名古屋市立大学経済学研究科・博士後期課程1年・矢田部亨)
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