増田淳矢氏(中京大学)による“The optimal acceptance rate in the monopolistic applicant screening”では、「選抜」システムに関する新たな数理モデルが提示され、モデルを使っての理論的な分析が行われた。ここでいう「選抜」とは、資格試験や大学センター試験による足切りのように、ある一定の水準以上の者を選出すること指している。
理論的な分析を行う上での前提は、大きく分けると以下の3つである。1つ目は、選抜する側の利益が、採用された受験者の能力によって決まる点である。能力が高い受験者を採用したときには、選抜者の大きな利益となる。また、モデルでは選抜者の利益が負になる場合も考慮されている。2つ目は、選抜側は試験や面接などの費用をかけなければ受験者の能力を知ることができないので、選抜に費用をかけるという点である。3つ目は、選抜側が費用を費やして選抜の内容(例えば、試験問題)を変えることで、受験者の点数の分散を小さくすることができるという点である。つまり、費用をかけることによって、能力が低いにもかかわらず、偶然選抜の際の成績がよかった受験者を採用してしまう、ということを防ぐことができる。
以上のモデルに基づく理論分析を行ったところ、以下の3点が導出された。まず、合否の決定は利得と選抜費用に依存して決まるという点である。次に、受験者の能力が高くても、選抜費用によって選抜確率が低くなることもありうるという点である。最後に、受験者の利得により、選抜確率が変わるという点である。
フロアからは、選抜する側でなく、受験者側に焦点を置いた分析についてや数式の意味など、モデルの仮定や計算の過程に関する質問がなされた。
(文責:博士後期課程1年矢田部亨)
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