本日の火曜研究会では、豊田宏樹氏(京都大学)により、Land Prices and Business Cycles in Japan: An Estimated DSGE Approachというタイトルでの研究報告がなされた。この研究では、標準的なニューケインジアンのモデルを拡張したDSGEモデルが提示され、日本のデータを用いてのモデルの推定が行われている。具体的には、家計・企業家・小売業者・銀行・中央銀行からなるモデルに、新たに「土地」が導入されることによって、土地価格の変動による経済への影響が分析されている。土地価格の変動を分析するために、家計の効用関数に土地という要素が組み込まれ、「土地需要ショック」によって効用が変動するというモデルの構造になっている。バブル期を含む1981年から1998年の日本のデータを用いてモデルの推定が行われた結果、正の土地需要ショックによって、土地価格が上がることで企業家の借入制約が緩み、産出量と投資が増加することが確認された。こうした推定結果より、バブル期以前には土地需要ショックが日本経済に果たす役割は小さかったものの、バブル期(とりわけ1990年前後)には、土地需要ショックがGDPの変動を生み出した大きな要因であるということが結論づけられた。
フロアからは、土地需要ショックの現実社会における解釈、それが家計だけでなく企業家の効用関数にも入る可能性、土地ショックとその他の生産性などへのショックとの相関、といった点について多くの質問がでる、盛況な研究会となった。
(文責:樋口裕城)
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