火曜研究会(7月25日)を開催しました。

第一報告:Nguyen Dang Tue氏(Hanoi University of Science and Technology)による”Financial Literacy, Financial Capability, and Retirement Planning in Urban Vietnam: Results from a Survey”では、ベトナムにおいて2016年8月から9月にかけて対面式のインタビューにより収集された600名の個人のデータを用いて、金融に関する知識や能力がどのように退職後の人生設計に関係しているかが分析されている。
 ベトナム都市部においては単利や複利といった利子率に関する知識は低いものの、他の金融に関する知識は概して高いことが明らかとされた。また、こうした金融に関する知識と教育水準とが相関していることも示された。退職者にとっては、金融の知識や能力と退職後の計画とか関係していることも明らかとなった。
 政策含意は、人々の退職後の生活水準の向上のためには、金融に関する知識や能力を向上させる必要があるということである。そのために、金融についての教育が必要となろう。

第二報告:萬行英二氏(名古屋大学)による”Parental Socioeconomic Status, Local Rice Production during the in Utero Period, and Later Child Health: Evidence from Indonesia”では、胎児期における負のショック(地域の不作)のその後の子どもの健康への影響が、両親の社会経済的な地位によって異なるかどうかが、インドネシアのデータを用いての回帰分析により分析されている。データは、州レベルの米の生産の四半期ごとのデータ(1983年から2012年)と、家計の個票データ(IFLS4(2007/8)ならびにIFLS-EAST(2012))とが結合されたパネルデータである。
 貧困家計出身の子どもの場合、胎児期に負のショックを経験すると、身長や体重といったその後の発育状況に負の影響があることが明らかにされた。一方で、非貧困家計の場合は、胎児期の負のショックのその後の発育への影響は見られなかった。

レポーターによる感想:今回の報告は2つとも実証研究であった。ベトナム人の金融知識は概して高いにもかかわらず、利子率に関する知識が低いのが驚きであった。一次データを収集することによる分析の意義を感じた。貧しい家庭の胎児が地域の米の生産量に影響を受けるのであれば、米を政府が買い上げ妊婦に支給するなどの格差是正政策などがあれば、子どもの健康状態の改善に役に立つのかと考えた。
(文責:名古屋市立大学経済学研究科・博士後期課程2年・岩本朋大)

経済学研究科では、原則として毎月第4火曜日に、定例の研究会(「火曜研究会」)を開催しております。
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経済学研究科火曜研究会


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